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3Dプリンタで変わる、製品開発とデザイン 第8回

オープンコミュニティのものづくりを活かす条件 ~リアルコミュニティの始動~

2015年12月14日  執筆者:原田 逸郎

オープンコミュニティの鍵を握る3Dプリンタ。五感で感じる検証が必要

オープンソースのコミュニティの機能は本来、多様性とスピードであるということを忘れてはなりません。また、オープンソースの根源であるソフトウェアとは違い、ものづくりではバーチャル上だけではなくリアルな物体としてアウトプットし、デザインや機能を五感で感じなければならないのです。
本来、ものづくりのあり方は、それを使用する側、つまり提供されるエンドユーザーに新しい価値が与えられなければならないもの。バーチャル上でみたものと、3Dプリンタでアウトプットされたものでは全く印象が異なります。そしてリアルとバーチャルのクロスする場所に存在して鍵となるのが、3Dプリンタなのです。


実際に前回ご紹介したGrabCADで行われている数々のデザインチャレンジでは、一定の選考を経たアイデアは、高性能3Dプリンタでアウトプットされ、専門のエンジニアによって強度や物性といった機械的特性が検証されます。そのため、こうしたオープンコミュニティを利用した製品開発の鍵を握るのが、リアルな場所でのコミュニケーションであり、最終品レベルでアウトプットすることができる高性能3Dプリンタと言えるでしょう。


実際に、オープンコミュニティによるものづくりを、クラウド上だけに留まらず、リアルな場所で行う取組が登場しています。そこではオンラインコミュニティに参加するデザイナーやエンジニアが、実際にチームを組み新たな価値を持つ製品開発を行い始めています。

オープンソースのリアルコミュニティで製品開発を進めるGEのFirstbuild

value29MakerBot Thingiverseとのコラボレーションによって実施されたFirstbuild Icebox Challenge

GrabCADのデザインチャレンジでもご紹介したGEは、クラウド上のコミュニティを製品開発に利用するだけではなく、リアルな場所と連動する新たな取組を始めています。それがFirstbuildと言われる施設です。
このFirstbuildは、オンラインコミュニティのメンバーがリアルな場所で集まれる開発拠点とも言える存在。アメリカ合衆国ケンタッキー州にあるルイビル大学内に建設されたこの施設は、自動車のオンラインコミュニティ、ローカルモーターズのコミュニティメンバーに開放されるもので、主にGEのキッチン周りの家電製品の開発が進められるリアルオープンソースコミュニティとも言える場所です。


この新たなものづくりの拠点とも言えるFirstBuildはなんと35000平方フィート(約3251平方メートル)にも及ぶ広大な敷地を持ち、内部には製品開発やプロトタイプの製造に必要な設備が整えられています。アイデアからすぐにプロトタイプで検証できるためのマシーンには、ストラタシスのカラーマルチマテリアルの高性能3DプリンタObjet500 Connex3を始め、MakerBotの3Dプリンタが多数配備、更にはレーザーカッターや、ウォータージェット、CNC加工マシーンまで揃っています。また、実際の試作品を起動させるキッチン周りの設備も充実し、開発中の意見交換を行うためのプレゼンテーションルームも完備しているほど。ここではこれまでオンライン上で意見交換を行ってきたコミュニティのメンバーが実際に会い、リアルに開発を進めることができるのです。

200以上のチームが参加したリアルな製品開発チャレンジ

このFirstbuildでは、興味深い取組も開始されています。GrabCADで行われていたようなデザインチャレンジのリアルバージョンが実施されているのです。 それは、家電製品のハッカソンとも言える試みで、Firstbuildに集うコミュニティメンバーにGEが自社製品の設計図やノウハウを公開、200以上ものチームがFirstbuildに配備された3Dプリンタや加工マシーンを駆使して、自らのアイデアと技術を結集しプロトタイプの開発に打ち込むという取組です。


この家電製品のハッカソンでは、なんと33時間という短い時間で開発を競うというもので、さまざまなキャリアを持つメーカー、エンジニア、デザイナーが集結しました。優勝チームには6万ドルもの賞金が与えられ、もちろんGEのプロダクトとして実用化される可能性も秘めているのです。ちなみに、審査メンバーもそうそうたるメンバーで構成され、半導体メーカーAtmelや、テキサス・インスツルメンツなど、電子機器関連の企業が集結。わずか33時間という短い時間ながら、30種類ものIOT製品が開発されました。ちなみに、上位3位に入賞したプロダクトは、1位がコーヒー豆を使った本格的な焙煎機能を持つオーブン、2位がスマートフォンの音声コントロールで水を濾過できる機能を持つ冷蔵庫、3位が無線LANでコントロールするクロックポッドといったIOT製品が生み出されました。
こうしたアイデアを迅速に具現化することができるのもレベルの高いエンジニアと高性能な3Dプリンタがそろうリアルコミュニティならではのものと言えるでしょう。

まとめ

オープンソースのものづくりを機能させるための条件

GrabCADのデザインチャレンジやGEのFirstbuildには、参加するエンジニアも、募集する企業側にも共通した特徴が見られます。それは当たり前の話ですが両者ともに相当な専門性を有しているという点が挙げられるでしょう。
改良案を募集する企業側も、エントリー要件を相当細かく規定しており、物性や素材、加工方法に関する基本的な知識が求められます。また応募するエンジニアやデザイナーもその要件を当然クリアした上で自らのスキルや経験が活かせるということを望んでチャレンジします。
ここで大切なことは、一見オープンコミュニティとか、クラウドコミュニティというと、インターネットというバーチャル上のみから、「広く、多くのアイデアが集められるという印象や「誰でも参加できる」というような印象を受けますが、実質はまるで異なります。


実質的にコミュニティによる製品開発を正しく機能させるためには、第一に、募集する企業側も、参加するエンジニア側もそのプロダクト製造に適切な専門性と技術を有している点が挙げられるでしょう。募集されたアイデアが優れたものであり、デザインと性能、両面において、元を上回るものでなければ意味がありません。こうしたことからもオープンソースのコミュニティは単なる従来からある受発注型のオンラインサイトではないのです。
第二に、集められたアイデアの検証をバーチャル上だけではなく、リアルな世界でも検証しなければならないという点が挙げられます。当たり前の話ですが、オープンコミュニティを機能させるためには、このリアルな世界での検証という点が最も重要になります。GEのFirstbuildなどがその代表的なものと言えるでしょう。


そして実際のリアルな場での検証を行う上で欠かすことができないのが、最終品に近い、もしくはそれと同等のクオリティを発揮することができる3Dプリンタなのです。次回はこのオープンコミュニティやクラウド製造のものづくりの質を向上させる、ストラタシスのクラウドDDMについてご紹介します。

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎
明治大学公共政策大学院卒。広告代理店にて大手タイヤメーカー、自動車メーカーなどの総合広告、ブランド・コミュニケーション、マーケティングを行う。その後、専門商社にて測定器関連事業の製品企画・開発を経て、2013年に株式会社アイ・メーカーを設立。これからの時代のものづくりに影響を与える3Dプリントとデジタル技術の情報サイト「i-MAKER.news」を運営。

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