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3Dプリンタ活用のためのヒント 第1回

3Dプリンタが活躍する世界

2015年1月28日  執筆者:水野 操

使い手の目的次第で3Dプリンタ活用の場面は広がる

新たに3Dプリンタを導入したい、あるいは3Dプリンタに興味があるので、もう少し詳しく知りたいというご相談を受けることがよくあります。その中でよくある質問が、最近でこそ減ってきましたが、「3Dプリンタで何ができますか?」というものです。


実は、これは回答するのが難しい質問です。


つまるところ、3Dプリンタは、かなり汎用性のある道具です。その方式や材料などにより、特定の用途への向き不向きがあるにしろ、かなり自由度の高い道具です。つまり、実は大事な質問は「3Dプリンタで何ができますか?」ではなくて、「私は何をしたいのだろうか?」という目的のほうです。
紙に印刷するためのインクジェットプリンターは「年賀状用」とか「PTAの案内物用」などが(向き不向きはあるにせよ)存在しません。要は使いたい人がどのようにかが問題なのです。

3Dプリンタは使い手の発想しだいと私が考えるもう一つの理由は、その使い勝手です。用途を問わないという意味では、極論すれば他の工作機械もそうですが、使いやすさ、手軽さという意味で群を抜いています。

従来の使い方

従来の使い方、といっても別に古い使い方という意味ではありません。ある意味で最もその用途と効果が証明されているという意味ですが、やはり、それは工業製品の試作であることは間違いがないでしょう。


元々、3Dプリンタは、早くから3D CADによる設計が普及していたこともあり、自動車部品の試作ビューローで当たり前のように普及していました。実際、3Dプリンタブームの到来前は、自動車部品をはじめとして、3Dでの設計が進んでいた工業製品の試作がマジョリティーを占めていたことは間違いがないでしょう。


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そして、一般にコスト削減や開発ライフサイクルの短縮が常に命題である、製造業にとって当面、これが主流の使い方であるでしょう。


さらに鋳物の鋳型であったり、航空機をはじめとする実際の製品の一部の部品等、現状でも実際の製品の一部として使用される例など試作にとどまらない使用例も増えてきていると言えるでしょう。


ただし、この分野の活用事例は、すでに様々なところで目にすることも多いので、この記事では割愛させていただきます。

高度化への進展

医療系は、テレビでも3Dプリンタの可能性を示す分野として、再三紹介されています。3Dデータや3Dプリンタ活用の分野としても、特に従来の加工方法では難しいものも多く、新たな活用分野として期待されています。臓器などへの適用はまだまだこれからと言えますが、骨の欠損部分に対するインプラントなどで、骨に置き換わる材料を使用したり、チタンなどを使用する例は、しばしば見受けられるようになってきましたし、直接体に適用するものでなくても、CTスキャンなどから得られたDICOMデータから3Dデータを作成し、そこから医療シミュレーターのための原型を作ることも行われています。


歯科分野においても、最近では口腔内スキャナから直接、石膏モデルを介さずにインプラント用のゲージなどを作成したりなどの試みがされています。筆者が最近お手伝いしている歯科技工所でも、従来の切削に加えて、3Dプリンタを活用した取り組みを進めていますが、かなり適合が良いということで、さらに活用を進めることを検討しています。


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他の事業分野への用途の展開とモノづくりの民主化

3Dプリンタブームがもたらした大きな成果の一つは、3Dプリンタが活用できる世界を大きく広げた、ということでしょう。3Dデータさえあれば、なんでも物理的に形にすることができる、ということを多くの人が知るようになりました。材料の種類もまだまだこれから、ということは否定できませんが、以前よりも急速にその種類を増してきているので、それも用途の広がりに寄与しているといえるでしょう。
また、新しくこの分野に入ってきた人ほど、従来の常識にとらわれることなく、自由に3Dプリンタという新しい道具を使い始めています。もちろん、従来からモノづくりに携わっている人でも、3Dプリンタの特徴に気が付き、より自身の事業分野を広げています。


例えば、YouTubeでの再生回数が5か月の間に400万回を超えたSUBARUのプロモーション動画「WRX STI vs StickBomb」の中で、StickBombと共演したラジコンカーは、3Dプリンタ製です。しかも、この元になったデータは、自動車のCADデータ。3Dのデータは、言ってみれば、バーチャルな「モノ」であって、単なる指示書ではありません。まさに、データのマルチユースと、成果物を迅速に作り、せっかく作ったデータからさらに新しいことへの展開としてのわかりやすい例と言えるでしょう。


参考:週刊マイ3Dプリンター第1号(デアゴスティーニ・ジャパン)

フィギュアの分野でも、もはや3Dプリンタは欠かすことのできないツールかもしれません。以前のCG作家さんにとって、その最終形はほぼ画像や映像作品であったといっても過言ではないかもしれません。
ところが、今から7、8年前にあるイベントでDimensionを展示し、デモしていた時に、自分がモデリングしたものが「本当に立体になる」ということに気が付いて衝撃を受けたモデラーさんたちがいました。そして、3Dデータさえあれば、自分たちも実際にモノを作ることができるということに気がつきました。そういう意味では、2次元の図面だけで仕事をしていた製造業の人たちよりも、はるかに3Dプリンタに近かったわけです。


今では、これはすっかりあたりまえの状況になったと言えるでしょう。ワンダーフェスティバルにいけば、明らかに3D CGと3Dプリンタで原型を作成した、とわかるようなモデルが増えてきました。実際、3Dプリンタの出力業者さんたちも、ワンダーフェスティバル前は、出力依頼が非常に込み合っていて大忙しのようです。


ものづくりはものづくりでも、従来形を作ることにそれほど縁がなかった電気系の人たちも、新たな事業展開の可能性に気が付いています。例えば、回路図に基づいてプリント基板の製造から実装することを業務にしている場合です。この分野も現在では回路図さえあれば、基板一枚から製造してくれるサービスがあります。
このような状況では、そのうち商売が立ち行かなくなると考え、中の基盤だけでなく、筐体までも顧客のニーズに合わせてカスタムに設計をして、トータルの製品として作っていこうと考えたわけです。元々量産しないものですし、可能性が充分にある、と考えたわけです。


それ以外にも、これまで外注でデザインから原型作りまでを頼んでいたのを、安価な3D CAD/CGの普及やパーソナル3Dプリンタの普及とともに内製化をはかる、というケースもあります。
お菓子などの分野も、従来ものづくりの専門家でなかった人が、3D CGでオリジナルのキャラクターなどを作り、それを3Dプリンタで原型にして、実際に良さそうだったら型を作る、ということが従来よりも簡単にできるようになっています。


ジュエリーは、実は従来から3D CADと3Dプリンタが使用されてきた分野です。筆者が事務所を構える、御徒町界隈は宝飾店も多いところですが、3D CADと3Dプリンタの業務への活用率はかなりあるようです。さらに3D CADや3D CGが入手しやすくなり、個人が自分の欲しいものをデザインできるようになり、出力サービスでもロストワックスに対応しているところが増えてきたので、出力サービスが併設するショップなどでも、かなりメジャーなアイテムになっています。


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そして、アートもこれからの分野かもしれません。昨年、筆者自身が3Dモデリングから造形までをお手伝いしたプロジェクトで、神奈川県美術展で入選作品となったアーティストの中村宏太氏の作品「夢枕」があります。こちらの作品は、3D CGでのモデリングと、3Dスキャンからのデータ作成を組み合わせ、最終的には3Dプリンタで出力したものです。手作業でも、あるいは従来のモノづくりのやり方でも難しい、3Dプリンタらしい作品といえるでしょう。


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明らかに3Dプリンタの活用によって、アイデアを形にする場面が広がったということです。

ものづくりのプロが遅れをとる?

3Dプリンタや3Dデータが、より多くの人に知られるようになってから、出力サービスや、データを利用したフィギュアの商品化、あるいは3Dデータ共有のサービスを始めとした、様々な事業の展開が始まっています。これまでになかったわけではありませんが、より大規模に単なる一企業の商売というレベルから抜け出し、ある意味で一つの産業分野になりつつあるのかもしれません。
しかし、これらの主役となっているのは、従来の製造業の人たちよりも、3Dというもののポテンシャルを見出し(勘違いも含めて)事業参入してきた人たちが多いのも実情ではないでしょうか。


従来型の製造業は引き続き重要なポジションを占めるかもしれませんが、もっとカジュアルなモノづくり、あるいは本格的ではあるけれど、小資本で本格的なモノづくりをする人たちも増えてきています。
従来のやり方にこだわったモノづくりをしていると、いつの間にか、その多様な広がりに気が付かず、いつの間にかものづくりの主役が入れ替わってしまうかもしれません。
モノづくりやその周辺の多様性に目を向けるための、うってつけの道具の一つが3Dプリンタであるのかもしれません。

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水野 操
大手PLMベンダー、外資系コンサルティングファームにて自動車、総合家電メーカーの3D-CADやCAE、PLM導入に携わったほか、プロダクトマーケティングや新規事業開拓に従事。 2004年11月に有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、代表取締役に就任。オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングや3次元CADやデータ管理をはじめとするIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)他多数。また、専門誌やウェブメディアに連載多数。

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